各ステップに入る前に:信念の復習
SFC小論文に合格するために重要な「信念」
・「SFC小論文」は、「SFCで活躍できる適性があるかどうかを確認する適性テスト」です。
・「SFC小論文」は、大学の出題に合わせて「適性がある」ことを示せばOKです。
・「SFCで活躍できる適性」とは「SFC固有の問題解決に対する取り組み方になじめるか」という適性です。
・「総合政策的アプローチ」は、「SFC特有の問題解決に対する取り組み方」を、「小論文用にまとめたフレームワーク」です。
この信念は、絶対に忘れてはいけない信念です。必ず学習の前に心構えとして心の中で、もしくは、声に出して繰り返しましょう。
解決策の検討
3.解決策の検討
3.解決策の検討
④1.で設定した問題に対する解決策を決定する。
⑤実効可能生の検討:④の解決策が「実際に効果があるかどうか」を検証する
※2.のステップで分析した原因に対する解決策となっているかどうかを検証する。
⑥実行可能性の検討:④の解決策が「実行」できるかどうかを検証
⑦副作用の検討:④の解決策に「副作用」「実行した場合に困ること」がないかどうかを検証
【出題頻度】「要」の部分であり、両学部とも頻出です。
最もバラエティに富んだ出題がなされる「解決策の検討」
「解決策の検討」は、「問題の再設定」に次ぐ大事なステップです。「問題の再設定」よりも格段に「わかりやすい」ステップではあるものの、出題のバラエティという意味では、直接的には「解決策の検討」からの出題の方が多くもあります。
例として、「ゴミ分別問題」を考えてみましょう。「家庭ゴミが分別されていないため、焼却炉がしばしば故障する」という状況について、それを解決するための解決策を考えることとします。(簡単のため「問題の再設定」と「問題の構造化」は省略します。)まず、
④1.で設定した問題に対する解決策を決定する。は、悩まずにできると思います。ここでは、アイデアとして3つ考えだしました。
解決策A:啓発ポスターを掲示する。
解決策B:分別は全て市職員が行う。
解決策C:抜き打ちチェックを行う。
⑤実効可能性の検討:④の解決策が「実際に効果があるかどうか」を検証する
解決策Bは、「分別がきちんとなされる」という意味で必ず効果があります。ところが、解決策Aは、ポスター自体を見ない人も相当数いるでしょうし、たとえポスターを見たとしても、そのことで分別が促されるかどうかもわかりません。だから、効果の程はよくわかりません。解決策Cも「罰金100万円」等のペナルティがあれば有効に働くかもしれませんが、ただ単なるチェックのみならば、意に介さない人もいるでしょう。
このように「効果があるかどうか」という観点から、解決策の有効性を検討するのが⑤実効可能性の検討のステップです。
⑥実行可能性の検討:④の解決策が「実行」できるかどうかを検証
解決策A・解決策Cは、その気になれば簡単に実行できそうです。「抜き打ち」も「頻度が低くなれば、効果が弱くはなる」ものの、例えば年に1回、一家庭のみをチェックする、というぐらいなら必ず実行できます。だから、「実行可能性」はあります。一方で、解決策Bは一見して実行が不可能に見えます。百歩譲って、実行するのに非常にお金がかかります。そのため、実質的には実行不可能でしょう。だから、「実行可能性」はありません。
このように「実際にその解決策が実行できるかどうか」という観点で検討数rのが⑥実行可能性の検討のステップです。
副作用の検討
解決策A・解決策Bはプライバシーの問題は生じなさそうです。解決策Aはそもそも関係ないですし、解決策Bも集積所に集められて誰のゴミか分からなくなった状態で分別すればいいのですから。ところが、解決策Cは「ゴミのチェック」を行い、「ゴミの所有者(責任者)」に、それをフィードバックするのですから、プライバシーの問題があります。抜き打ち検査なのですから、個人情報が書かれた書類はもちろんのこと、ゴミとして捨てた下着等を再度あさられる可能性があるわけです。この場合、「プライバシーの侵害」という「副作用」が生じます。もちろん、「解決策に効果がありそう」でも「解決策が実行できそう」でも、それを実行することで「他の悪い状況が生じる」のであれば、その解決策に対する利点は損なわれます。
このように、「その解決策を実行することで生じる新たな悪いこと」について検討するのが、「⑦副作用の検討」です。もちろん、「新たに良いこと」が生じる場合もありますよ。念のため。
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以上のように、「解決策の検討」ステップは直感的に非常に分かりやすいです。だから、このステップ内の4つの小ステップをしっかり操れるようになれば、簡単にこのステップはマスターできるようになります。
注意事項:厳密になりすぎないように
解決策Bについて、上記の例では「実行可能性がない」と書きました。けれども、横浜市のように非常に大きな都市では、無理矢理ひねくりだせばそのための予算を用意することは可能です。だから「実行可能性はある」。しかし、実際に実行した場合、他の予算を圧迫するため、「他に必要な解決策(介護とか、教育とか…)が実行できなくなる」という「副作用が生じる」と分析することもできます。これは、どちらが正解というものではなく、その都度現実的に判断していくべきです。
同様のことは「解決策C」の「実行可能性と実効可能性」についても生じます。あまりにも頻度が高いと「実行することは難しくなる」反面、「解決策の効果は高く」なります。逆に、あまりにも頻度が低いと「実行は簡単である」反面、「解決策の効果は低く」なります。
「分類」をすることが目的ではなく、「もれなくきちんと考えること」が目的なのですから、きちんと検討の俎上に上がれば、どちらに分類をしてもよいわけです。
SFC小論文の過去問から
資料文
・総合政策学部 2010年 資料1
これは王道です。この資料をきちんと読み込んでおいてください。
設問
・総合政策学部 2011年 問1 (3) 実現のためのプロセスと実現のために君自身ができることあるいはしたいこと
④と特に⑥を問われています。「君」が実行できること、という視点ですね。
・総合政策学部 2010年 問2・問3 「有効かどうかについて論じて下さい」
特に⑤〜⑦が問われています。問1で③を問われているため、③と⑤の関係に着目すると答案が書きやすくなります。また、①に目をつけた上で、「問題を解決しない」という答案を書く事も可能です。
・総合政策学部 2009年 問2 2)目指すべき社会を実現するための具体的政策 3)政策の実現可能性を支える根拠やデータ
2)は④が、3)は⑤〜⑦がそれぞれ問われています。「実現可能性」とは単に⑥のステップをさすのではなく、⑤〜⑦全てをさします。私が提示しているフレームワークは絶対的な分類ではなく、思考するためのプロセスですので柔軟に捉えていきましょう。
・環境情報学部 2012年 問題1・問題2
「印象的な関わりを持った生活用品」を解決策と見なして1:問題の再設定、④解決策の決定、2:問題の構造化が問われている問題です。
・環境情報学部 2010年 問題1 将来の電子的な図書館が日本語に与える影響
これは、「電子的な図書館」を解決策と見なした上で、日本語に与える副作用を検討する⑦のステップです。もちろん「よい副作用」も考えうることが特徴です。
・環境情報学部 2010年 問題2 電子テキストの長所と短所
1.問題の再設定と⑦副作用の検討の双方を答案に書く事ができます。「電子テキスト」を解決策と見なす視点が重要です。
・環境情報学部 2010年 問題3 皆さんが大学に入学したときの電子図書館の「意味」と「どのように使うのか」
「意味」が「1.問題の再設定」、「どのように使うのか」が「④解決策の決定」です。「皆さんが」という言葉で限定されているように「⑥実行可能性の検討」にも視野を広げることが重要です。
・環境情報学部 2009年 こども向け映像コンテンツの作成
直接的には「④解決策の決定」が中心です。但し、(3)企画案を誰に読んでもらうか、は⑥実行可能生や「1.問題の再設定」を方向付け、(4)企画の具体的な内容 で④解決策の決定 を「1.問題の再設定」と⑤〜⑦を意識しながら答案を作成することが重要です。
「解決策の検討」には「問題の再設定」が隠れている
SFC小論文、ひいては、総合政策的アプローチ、SFCの問題解決の本質は「問題の再設定」にあります。なぜならば、「解決策の検討」は特段SFC流の問題解決でなくとも自然に行われていることだからです。科学でも、法学でも、経済学でも同様のステップを意識しています。だから、本質はあくまで「問題の再設定」におかれています。
設問のみを素直に見ると「3:解決策の検討」に見える設問が圧倒的に多いです。ところが、資料文や他の設問との関連を考えると、「1:問題の再設定」を念頭においた上で、「3:解決策の検討」について書いてください、という出題が大半を占めます。
これを意識しないまま、答案を書こうとすれば、アイデア重視の試験に見えるのは当然です。ここは、勘違いしないようにしてください。
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